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活動報告
第84回日本矯正歯科学会に参加して(院長)
2025年9月29日から10月1日にかけて、北海道札幌の札幌コンベンションセンターで開催された第84回日本矯正歯科学会に参加しました。テーマは「繋ぐ未来―コラボレーションの力」。海外・国内特別講演、教育講演、シンポジウム、生涯研修セミナー、臨床セミナー、スタッフ &ドクターセミナー、学術展示など、多彩なプログラムが組まれていました。大会長の北海道大学・佐藤嘉晃教授によると、今年は学会設立99年にあたり、矯正歯科の発展は医科・歯科や異分野との連携の積み重ねによって築かれてきたことから、このテーマが設定されたとのことでした。
私は特に「シンポジウム3 口唇口蓋裂の治療:Final touchupsへ向けて」「臨床セミナー2 高齢患者の矯正歯科治療」「国内特別講演 身近なもので生き延びろ」の3つを楽しみにしていました。
まず「口唇口蓋裂の治療」では、各大学がチームアプローチによる最終段階の仕上げまでの工夫を紹介。福島県立医科大学形成外科の小山昭彦教授は、北海道大学在籍時に比べ、医科単独大学に移り医科・歯科の連携の難しさをあらためて痛感したと述べられました。近年ようやく他大学矯正歯科との協力体制が整い始めたとのことです。形成外科の立場からも他科との連携の重要性が強調され、私自身も子ども病院形成外科との情報共有をより密に行う必要性を感じました。小山教授が力を入れている鼻形成では、肋軟骨を用いた鼻中隔延長術の紹介もあり、非常に興味深い内容でした。
一方、「高齢患者の矯正歯科治療」は同時刻に別会場で行われており、「高齢者の顎変形治療」に関する講演を聴く予定でしたが、順番変更により聴講できず残念でした。以前、80歳近い女性が下顎前突で相談に来られた際、外科的矯正治療のリスクが高く適応外と判断した経験があり、年齢や健康状態によってどの程度まで手術が可能なのかを知りたかったためです。今後の診療の参考として、関連報告を改めて確認したいと感じました。
国内特別講演「身近なもので生き延びろ」は、元南極料理人・西村淳氏による南極越冬体験をもとにした講演でした。堺雅人氏主演の映画で彼の存在を知っていましたが、実際の体験談はさらに興味深く、最低気温マイナス79℃という極限環境で、身近なものを工夫して生き抜く姿に感銘を受けました。私たちは日常で命の危険にさらされることはありませんが、仕事や生活の中で困難に直面することはあります。その際には、諦めずに手の届く資源を活用して打開する姿勢が大切だと改めて感じました。ある雑誌で歯科医の資格を持つ海上自衛隊員の方が、砕氷艦「しらせ」に乗艦した記事を読み、少し期待していましたがそれには触れられませんでした。医官と違い歯科医官は南極基地に常駐しないからかもしれません。
来年2026年は、日本矯正歯科学会設立100周年の記念大会が横浜で開催される予定です。これまでの歴史を踏まえ、さらに発展する学会となることを期待しています。


