唇顎口蓋裂などの治療
唇顎口蓋裂の治療について
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顔面先天奇形のひとつで、唇や口の中がわれているものを言います。
一般に兎唇(としん)、みつくちといわれているもので、発生頻度は500人に1人の割合です。最も多いのが、唇顎口蓋裂(唇から上あごの奥まで連続しているもの)で、この場合、咀嚼障害や発音障害および審美障害など多くの障害がみられます。
当院では、唇顎口蓋裂の知識と経験をもとに医科歯科連携の医療を行っております。適切な時期に、必要な治療が必要になりますので詳細につきましては当院にご相談ください。唇顎口蓋裂は健康保険が適用され、育成医療による公費補助が受けられます。
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主な症状
- 口唇や鼻の変形
- 裂部の歯の欠損、歯並びの乱れ
- 摂食障害
- 言語障害
- 顔面の発育の不十分
- 中耳炎にかかりやすくなる
当院でおこなった主な症例
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片顎性唇顎口蓋裂の症例①
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年齢:中学生 性別:女子 症状名:片側性唇顎口蓋裂
右側唇顎口蓋裂の患者さんです。
上下の歯列が狭窄して前歯はデコボコ、右上第2小臼歯も並ぶスペースがなく内側にはえています。
まず上下の歯列を左右に拡げたあと右上大臼歯を後ろに動かして右上第2小臼歯を並べます。
その後、内側にはえている上の前歯(側切歯)と下の左右第1小臼歯を抜歯して歯をきれいに並べることにしました。-
上にクォードへリックスを付け左右に拡げていきます。
クォードヘリックスとは
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上にクォードへリックスを付け左右に拡げていきます。
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下にはバイヘリックスを付け、左右に拡げます。
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スペースができたので第2小臼歯を動かしていきます。
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新しいリンガルアーチに代え、第1小臼歯も後ろに動かします。
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下の歯列も十分に拡がりました
内側にはえていた上の前歯(側切歯)と下の左右第1小臼歯を抜歯してエッジワイズブラケットを付けました。
ねじれていた前歯と第2小臼歯も並んできました。
下の前歯を引っ込めているところです。
もう少し調節したら装置をはずせそうです。
かなり期間がかかりましたがきれいな歯並びと良い咬み合わせを得ることができました。
治療期間は5年8か月です。
ここまでの費用は、総額約19万円です。(公的医療保険が適用されています。) 片顎性唇顎口蓋裂の症例②
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15歳 男性 片側性唇顎口蓋裂
左側唇顎口蓋裂の患者さんです。
左上の前歯が先天的に欠如しています。
左上に乳歯が1本残っています。
できるだけ外科手術は避けたいという希望に添って、まず上の歯列を左右に拡げるとともに歯列全体を前方に移動、下あごの成長を押さえ、成長方向を変えることを治療方針としました。上の歯列をクォードへリックスで拡げました。夜間、就寝時にはOMAを使用しています。
上の前歯にエッジワイズブラケットを付け前方に出すように試みているところですが、下あごの成長が大きく、なかなか予定通り進行していません。
再診断後、外科手術を併用することになりました。
成長が止まるのを待ってすべての歯にエッジワイズブラケットを付け術前矯正を開始しました。術前矯正が終わりました。
左上の先天的欠如部分のスペースは閉鎖しました。
手術を担当する口腔外科医と最終打ち合わせをします。手術時には必ずレントゲン上での計画(ペーパーサージェリー)と模型上でより具体的な計画を立てます。(モデルサージェリー)
当初、上あごは前方へ5mm(Le Fort 1型),下あごは右後方へ12mm、左後方へ6mm(IVRO)の予定でしたが、上あごの後戻りの可能性が高いため、上あごは延長器を取り付け、8mmの前方への上顎骨延長 (Distraction)を行うことにしました。
この術式は手術中にいったん下あごを後方移動し、顎間固定を行って術後に上下のあごを同時に前方に延長していく方法です。手術が終わり、退院当日にできるだけ来院していただきます。
この方は手術後13日目でした。
手術前に製作して渡しておいた装置(オルソサージカルスプリント)を入れ、ゴムをかけた状態で来ていただきます。まだ少しはれが残っています。
上あごにはTurich type上顎骨延長器がついていますがこれは3ヶ月後に除去の予定です。もうすぐ手術後3ヶ月が経過します。
4日後に上顎骨延長器の除去手術です。
かなり安定してきたので除去後、術後矯正を開始します。術後矯正も終わり、そろそろ装置をはずします。
ここまでの費用は、総額約46万円です。(公的医療保険が適用されています。これ以外に外科手術の費用がかかりますが、公的医療保険に加え高額療養費制度の適用になります。)
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顎変形症の外科手術の費用について
- 外科手術は、入院費を含めて、総額で約80~120万円程度かかります。
(手術内容、入院日数、入院時期によって変わります。) - 保険適用となるため、3割負担であれば30万円前後になります。
ただし、高額療養費の補助制度が適用されるため、殆どの方は実質負担額は10万円程度です。 - 保険で外科的矯正治療を受けるには、自立支援医療の指定を受けた矯正歯科と、口腔外科の両方で認定を受ける必要があります。
- 外科手術は、入院費を含めて、総額で約80~120万円程度かかります。
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厚生労働大臣が定める疾患
- 唇顎口蓋裂
- ビンダー症候群
- ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む。)
- スティックラー症候群
- 鎖骨頭蓋骨異形成
- 小舌症
- トリーチャ・コリンズ症候群
- 頭蓋骨癒合症(クルーゾン症候群及び尖頭合指症を含む。)
- ピエール・ロバン症候群
- 骨形成不全症
- ダウン症候群
- フリーマン・シェルドン症候群
- ラッセル・シルバー症候群
- ルビンスタイン・ティビ症候群
- ターナー症候群
- 染色体欠失症候群
- ベックウィズ・ウイーデマン症候群
- ラーセン症候群
- 顔面半側萎縮症
- 濃化異骨症
- 先天性ミオパチー
- 6歯以上の先天性部分無歯症
- 筋ジストロフィー
- CHARGE症候群
- 脊髄性筋委縮症
- マーシャル症候群
- 顔面半側肥大症
- 成長ホルモン分泌不全性低身長症
- エリス・ヴァンクレベルド症候群
- ポリエックス症候群(XXX症候群、XXXX症候群及びXXXXX症候群を含む。)
- 軟骨形成不全症
- リング18症候群
- 外胚葉異形成症
- リンパ管腫
- 神経線維腫症
- 全前脳胞症
- 基底細胞母斑症候群
- クラインフェルター症候群
- ヌーナン症候群
- 偽性低アルドステロン症
- マルファン症候群
- ソトス症候群
- プラダー・ウィリー症候群
- グリコサミノグリカン代謝障害(ムコ多糖症)
- 顔面裂(横顔裂、斜顔裂及び正中顔裂を含む。)
- 線維性骨異形成症
- 大理石骨病
- スタージ・ウェーバ症候群
- 色素失調症
- ケルビズム
- 口腔・顔面・指趾症候群
- 偽性副甲状腺機能低下症
- メビウス症候群
- Ekman-Westborg-Julin症候群
- 歌舞伎症候群
- 常染色体重複症候群
- クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群
- 巨大静脈奇形(頸部口腔咽頭びまん性病変)
- ウイリアムズ症候群
- 毛 ・鼻・指節症候群(Tricho Rhino Phalangeal症候群)
- クリッペル・ファイル症候群(先天性頸椎癒合症)
- アラジール症候群
- 高IgE症候群
- エーラス・ダンロス症候群
- ガードナー症候群(家族性大腸ポリポージス)
- その他顎・口腔の先天異常