非抜歯矯正について
非抜歯矯正とは
矯正治療の際に、抜歯をして歯並びを整える「抜歯矯正」と、抜歯をせずに歯並びを整える「非抜歯矯正」とがあります。理想的には、抜歯を行わずに歯並びを整える方が良いでしょう。しかし、現実問題として外科治療を含めて顎骨の拡大を加味した場合でも、歯の収まるスペースが十分でないケースも想定されます。
当院では、可能な限り「抜歯を伴わない矯正治療」をご案内いたしますが、各患者さんの症状を確認させていただき、必要だと思われた場合には「抜歯矯正」をご提案することもございます。
当院でおこなった主な症例
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歯のデコボコ(永久歯叢生)
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20代女性 前歯のデコボコが気になり来院
左上の前歯がねじれて内側になっています。①
下の左右第2小臼歯が、並ぶすき間がなく、内側に入っています。②
また右側の咬み合わせが、前後にずれています。③
左上の前歯の並ぶすき間がなくなったのは、このずれが原因です。
上下歯列を左右に拡げ、並べた後、右上の大臼歯を後方に動かして咬み合わせを治していくことにしました。まず、上はクォードヘリックス、下はバイへリックスで拡大します。
途中から左右への拡大と平行して、エッジワイズブラケットで歯を並べていきます。とりあえず歯は並び、デコボコはなくなりましたが、右側の咬み合わせは、ずれたままです。
SMCで右上の第2大臼歯から後方へ動かしていきます。
第2小臼歯まで動かしたところです。
犬歯まで動いたので、前歯を右後方へ動かし始めます。
もう少しで、スペースもなくなります。
微調整をしています。そろそろ装置をはずせそうです。
微調整をしています。そろそろ装置をはずせそうです。
ここまでの費用は、総額約90万円です。(税抜き料金 公的医療保険が適用されない自費診療です。)
リスク・副作用
矯正治療には、う蝕や歯肉炎・歯周病、歯根吸収、歯肉退縮 などのリスクがあります。(リスク・副作用参照)
歯を抜かないために
行う治療方法
矯正治療では健全な小臼歯を抜いてスペースを作り、歯並びをきれいにする方法がとられることがあります。
では小臼歯を抜く以外の方法でスペースを確保することはできないのでしょうか。それには以下の方法が考えられます。
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歯列を左右に拡げる
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内側からクウォードへリックスという装置で左右に拡げます。
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ある程度拡がったら外側から ワイヤーで並べて行きます。
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きれいに並びました。
注意点
この方法はすべての方にできる訳ではありません。歯列の幅が狭い方が適応です。
年齢の低い方が大きく拡大できる傾向にあります。 -
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奥歯を後ろへ動かす
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SMCという装置でまず第1大臼歯
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今度は第2小臼歯です。 反作用を少なくするため、1本ずつ動かします。
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左右の第2小臼歯まで動きました。
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動かし終わった歯を止める装置に代えた後引き続き 第1小臼歯を動かしています。
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右上犬歯の移動中です。 犬歯を動かし終わったら 次は前歯の移動になります。
注意点
この方法もすべての方にできる訳ではありません。後方にスペースがある方が適応です。
また第2大臼歯がはえる前の方が移動が容易です。 -
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前歯を前方へ出す
口元が引っ込んでいる方や前歯が後ろに下がっていたり、傾いている方が適応になります。
それ以外の方にはできるだけ避けたい方法です。 -
歯を削る
歯の表面のエナメル質を削ってすきまを作る方法です。
ディスキング、スレンダライジング、あるいはストリッピングと呼ばれ、すきまを作る以外にも後戻りを防ぐ手段のひとつとして矯正治療では用いられることがあります。 -
小臼歯以外の歯を抜く
第2大臼歯を抜く場合は、第3大臼歯(親知らず)を代わりに使うことが前提となります。
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患者さんのためになる治療を
ご提供します以上非抜歯治療について説明しましたが、単に並べるだけでよいのならほとんどの方は小臼歯の抜歯をせずに可能だと思います。
患者さんはデコボコがなくなったらきれいになったと思われるようですが、歯というのはもともと咬むためにあります。
しっかりと咬めるためには犬歯から後ろの歯は上と下が互い違いに、同名の上の歯が下の歯より後ろで咬むのが原則です。
また口元が出過ぎて口が閉じれなくなったり、咬みにくい、あるいは安定しないといった問題が生じてしまっても困ります。
ですから上に記した方法で無理な場合はやはり小臼歯を抜歯する方法をとらせて頂いています。
わたしは患者さんの望まれる治療よりも患者さんのためになる治療を提供できるよう心がけています。