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活動報告
「顎変形症を多角的にみつめる」第35回日本顎変形症学会に参加して
2025年6月5日と6日、福岡県北九州市の北九州国際会議場で開催された第35回日本顎変形症学会に参加してきました。本学会は「顎変形症を多角的にみつめる」をテーマに掲げ、特別講演をはじめ、5つのシンポジウム、サテライトセミナー、ランチョンセミナー、一般演題(口演・ポスター)など、多彩なプログラムで構成されていました。
例年同時開催される教育研修会は、事前にオンデマンドで視聴できる形式となっており、私は学会前にしっかりと内容に目を通すことができ、より理解を深めた上で当日の発表に臨むことができました。
特に印象に残ったのは、シンポジウム 2「治療技術の伝承〜主要手術以外にも知っておくべき有用な手術のTips and Tricks〜」でした。4名のシンポジストのうち2名が当院とご縁のある先生だったのも、個人的に感慨深い点でした。一人は、大阪歯科大学の竹信俊彦教授で、以前より多くの患者さんの手術を担当していただいています。もう一人は、昨年、転居に伴って私が引き継いだ患者さんの手術をお願いした熊本大学の平山真敏先生です。竹信先生の洗練された発表はもちろんのこと、中堅にあたる平山先生も堂々とした姿で非常に印象的でした。
また、私が特に注目していたシンポジウム3 「骨格性開咬の治療戦略」とシンポジ ウム4 「外科的矯正治療におけるコンピューターシミュレーションの現在地とこれから」も、非常に内容の濃いものでした。前者では、東京歯科大学の西井康教授が、骨格性開咬の治療方針として①前歯の挺出、②大臼歯の圧下、③外科的矯正治療という3つの方法を取り上げ、それぞれの適応基準や治療後の後戻り傾向についてわかりやすく解説されました。治療戦略を再考する上で非常に有用な内容であり、私自身の頭の中の整理にもつながりました。
後者のシンポジウムでは、大阪大学の伊藤慎将先生が、3Dデータを活用したデジタルサージェリーによる3症例の治療手順や内容の詳細について発表されました。術前のコンピューターシミュレーションと3Dプリンティング技術の組み合わせにより、手術の精度を高める試みがなされており、今後さらなる進化が期待されます。ただし、現状では一部アナログ的な作業が残っており、完全なデジタル化に向けた課題も示されました。なお、その発表の最後に、思いがけず息子の名前がスライドに協力者として登場していたのには驚きました。どうやら発表された3症例のうち1つが、息子が治療したケースだったようです。
日本顎変形症学会は、口腔外科医および矯正歯科医が中心となり、顎変形症に関する学術研究や教育・普及活動を通して医療の質の向上と人材育成を図り、さらには国民の医療福祉の増進に寄与することを目的としています。発足当初は「研究会」として小規模に始まった本会も、今では会員数3000名近くを誇る学会へと成長し、毎年活発な発表と討議が行われる場となっています。
来年の開催地も引き続き福岡に決まっており、次回の学びの場に今から大きな期待を寄せています。

