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「顎変形症と顎関節」第21回教育研修会を視聴して

2025年5月8日から6月13日にかけて開催された第21回教育研修会を、第35回日本顎変形症学会の開催に先立ちオンデマンドで視聴しました。私は学会直前の2日間でなんとか全講義を視聴することができました。

はじめに、日本顎変形症学会理事長 濱田良樹先生の挨拶があり、教育研修会の趣旨として、顎変形症に携わる会員に向けた実践的な知識の提供と、経験豊かな専門医による分かりやすい解説が紹介されました。今回のテーマ「顎変形症と顎関節症」は、治療において重要な顎関節に焦点を当て、臨床に直結する密度の高いプログラムでした。

学術委員長の西井康先生による「本教育研修会のねらい」の解説に続き、6名の講師による次のような講演がありました。

1.顎変形症学会認定医試験の説明 

・共通筆記問題,口腔外科 

                 演者:上木耕一郎(山梨大学大学院医学域臨床医学系歯科口腔外科学講座) 

・矯正歯科 

                 演者:川元龍夫(九州歯科大学健康増進学講座顎口腔機能矯正学分野 )

2.顎変形症治療における顎関節症への対応と注意点        

                 演者:谷本幸太郎(広島大学歯学部歯科矯正)

3.顎離断術後の顎関節症ならびに下顎頭吸収への対応と注意点   

                 演者:田中英二(徳島大学歯学部口腔顎顔面矯正分野) 

4.顎変形症患者における顎骨形態と顎関節について       

                 演者:野上普之介(東北大学大学院歯学研究科顎顔面口腔再建外科学分野) 

5.正常構造を呈していない顎関節を有する顎変形症患者の臨床      

                 演者:亀井和利(横浜労災病院歯科口腔外科・顎口腔機能再建外科)

6.顎関節疾患を起因とする顎変形症の治療                

                 演者:中岡和敏(鶴見大学歯学部歯学科口腔顎顔面外科学顎顔面外科)

顎関節症の疫学については、日本人の約25%が症状を有し、そのうち3~4%が治療を必要とするとのこと。顎関節症に対する特効薬はなく、治療成功率は低いという現状が報告されました。私の臨床経験では、以前はスプリント装着後に矯正治療を行うこともありましたが、現在ではスプリントを用いることはなく、軽症例には顎の体操を勧め、重症例は口腔外科に紹介するようにしています。

また、顎変形症(下顎前突症)の診断実態調査では、顎関節症は自然治癒の期待できる疾患であることから、必ずしも矯正歯科治療や外科的矯正治療の結果、顎関節症の有症状率が低下したとは言えないものの、症状が悪化する可能性は少ないことが示唆された。上顎前突症例や顎偏位症例についての調査結果がどうなるかも知りたいものです。

特に印象深かったのは、上顎前突・下顎後退症例における進行性下顎頭吸収に関する講演でした。徳島大学の田中栄二先生が詳しく解説されたこの病態は、10代女性に多く、男女比は1:9。下顎頭の進行性吸収と下顎枝高の減少により骨格性開咬を生じるとされ、原因として年齢・性別・機械的負荷・手術の影響が考えられるが、明確な要因は未解明です。当院でも昨年発症した患者さんがおり、現在は経過観察中で進行は停止しているようですが、希望があれば再手術も視野に入れています。

口腔外科と矯正歯科の両分野の講師が登壇し、共通の認識を多く共有されており、専門間の連携の重要性を改めて実感しました。全体を通して、顎関節に特化したこれだけの講義を聴くのは初めてであり、非常に有意義でした。当院では初診時に顎関節の審査や顎位のズレの確認を行っていますが、今回の研修を受け、今後はより注意深く観察していく必要性を再認識しました。今後も新たな知見を積極的に学び、日々の臨床に活かしていきたいと思います。

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